五輪ー日本日記

 劉翔のラストランを見て感動した。
 ロンドン五輪を連日見ていて、多くの感動的なものを目にしたのだが、一番印象に残ったのは、劉翔のラストランであった。劉翔アテネ五輪の110mハードルで金メダルを取り、中国の英雄として北京オリンピックでの活躍が期待されながら、決勝戦では故障のためにスタート地点で棄権した。その後は、国内のネットなどで激しいバッシングを受けたと言うことは聞いていた。書き込みの中には「卑怯者」とか「民族の裏切り者」など言った極論まであったそうである。
 そのことで、私は東京オリンピックの時の円谷幸吉選手のことを思い出した。
 「男子マラソン本番では君原や寺沢徹がメダル争いから脱落する中、円谷だけが上位にとどまり、ゴールの国立競技場に2位で戻ってくる。だが、後ろに迫っていたイギリスのベイジル・ヒートリーにトラックで追い抜かれた。これについては、『男は後ろを振り向いてはいけない』との父親の戒めを愚直にまで守り通したがゆえ、トラック上での駆け引きが出来なかったことが一因として考えられている。」(ウィキペディアアベベの優勝は当然のこととして、期待していた君原などが惨敗し、期待外の円谷が競技場で二位で現れたときは、ほとんどの人は銀メダルを確信したのだが、後続のヒートリー選手にゴール前で抜かれた。
落胆のあまりだろうか、円谷選手に対する非難の声があがった。
 そのせいか、彼は「メキシコオリンピックで金メダルを狙う」と公言せざるを得なかった。その実、持病の腰痛に苦しんでいたそうだが。
 そして、そのメキシコオリンピックの年、選手選考にも漏れた円谷は自衛隊の宿舎で、ひっそりと自殺した。
 彼の自殺を知って初めて、多くの国民が彼に被せていた期待と非難の不当さに気付いたのであった。まさに「ナショナリズムとスポーツ」の問題点を浮き彫りにしたものであった。
 
 さて、劉翔選手は、このロンドン五輪でも、第1のハードルを越えられず、棄権となった。全世界の観衆が息を呑んだ瞬間でもあった。二度も悲劇が繰り返されるとはと言う思いで。片足でケンケンをしながら彼は退場した。それで、終わりだと思っていたら、後日の総集編で、彼が引き返してきた姿を目にした。一度、控え室に戻ろうした彼が、何か忘れ物をしたようにグラウンドに引き返し、ゴール近くまで片足ケンケンで走り、ゴール手前の最後のハードルに感謝の口づけをして退場する姿が見られた。
 ああ、このような姿で、彼は自分の心情を表現しているのだ、最も悔しく残念なのは、ほかでも無い彼自身であることが、そのパフォーマンスによって如実に示されていた。思わず、目頭が熱くなってきた。「敗者の美学」のようなものを見た。恐らく、このパフォーマンスで彼の国の国民は納得せざるを得ないだろうと思った。そして、円谷選手の場合との違いにも思いを致した。時代と国民性の違いと言うことを考えた。
 劉翔選手は今回は好意的に迎えられたようだ。
 以下に、中国の記事を一部紹介する。


刘翔:两个月后可以走路慢跑 当然还想重回赛场
2012-08-15 09:54:33 来源: 中青在线-中国青年报(北京) 有40547人参与 刘翔说,现在还是感觉到有一些疼痛,“两个星期后拆线换石膏、换脚套,两个月之后就可以慢跑,可以走路。”当被问及是否还想再回赛场时,刘翔不假思索地说:“当然,当然想!”

昨天,中国奥运代表团飞抵北京,胜利凯旋。而单独回国的中国跨栏名将刘翔经过10多个小时的长途飞行,昨天上午也抵达了上海。上海市副市长赵雯到机场迎接,为刘翔送上鲜花并致以慰问。据悉刘翔并未选择回家,而是直接坐车前往莘庄基地,接受进一步的康复治疗。

“很高兴,真的很高兴,可以回到祖国。”昨天出现在浦东机场的刘翔,脚上裹着厚厚的石膏,不过刘翔的精神状态还是不错。面对迎接的领导和几家媒体,刘翔微笑面对。“回家真好。”他说。

“(情况)都不错啊,不就是多了条疤吗。”被记者问及手术后的恢复情况,刘翔展现出他一贯的阳光和幽默。刘翔说,现在还是感觉到有一些疼痛。“现在吃止疼药,医生说两个星期后就能消痛,之后伤口应该能渐渐康复,两个星期后拆线换石膏、换脚套,两个月之后就可以慢跑,可以走路。”他说。当被问及是否还想再回赛场时,刘翔不假思索地说:“当然,当然想!”

刘翔的教练孙海平昨天同机抵达上海。他告诉记者,刘翔9日在英国惠灵顿医院接受的右跟腱筯强及修复手术,术后恢复情况良好。“根据医生的建议,大概三个月后可以开始慢慢活动。之后的康复计划分成两部分,一部分是医生建议的手术地方的康复,还有身体部分的康复这两个部分。身体部分可以尽早进行,手术的地方可能要根据医生的建议,慢慢进行。”

谈到刘翔的伤何以突然发作,孙海平表示还是老病根没有控制住。“在2008年经过手术后,他的伤总是在不断反复,根据训练强度时好时坏。几年来团队都在努力控制刘翔的伤势,每天刘翔治疗伤势要三个小时,包括消毒和做理疗。”孙海平说,“我们谁也没料到预赛上他的跟腱会断裂,这个情况非常突然,完全在我们意料之外。”


谈到刘翔的未来,孙海平坦言没有想好,何时能重回赛场,完全取决于刘翔的康复情况。刘翔也表示,现在还没有计划太多。“现在先把自己的伤养好,希望能重新站到跑道上,但是对于奥运会和全运会,我现在还并没有想太多。”

在返回上海后,刘翔并没有直接回家,而是返回了上海莘庄训练基地。他的父亲解释说,刘翔希望在没有打扰的条件下,静养一段时间。上周日回到上海之后,刘翔的母亲吉粉花就去莘庄基地帮助刘翔整理了房间,把被子都晒了晒。“许多难关,心理上的难关,他只有靠自己跨越。”刘翔的父亲说。

文/本报记者褚鹏