中谷風の瀋陽以前8

 19日に呂君と蘇さんに私たちは夫婦で会った。阪急春日野道の南側2百メートル位のところにあるモンゴル料理の店に招待された。残念ながら、二人とも今年の受験で成果を上げることができなかった。合格したら、私のほうが合格祝いの会を持ってあげようといっていたが、それができず、「御世話になったので、ぜひ食事に招待したい。」と彼らのほうから招いてくれた。モンゴル料理ではまず初めに「羊乳茶(羊奶茶)」が出てくる。羊の乳に固めたモンゴル茶を入れて温め、少し塩を加えた飲み物である。初めて飲む不思議な味がした。次に、南京豆と人参と胡瓜の炒め煮が前菜として出てきた。ピーナツを色々食べたことはあるが、このように軟らかく煮てあるのは、初めてだ。呂君によれば、南京豆は山東省の特産であるそうで、こうした食べ方は、幼い時から馴染みがあると言う。メインの料理は羊肉の炒め物や豚肉の揚げ物の酢豚風の味付けであったり、炭水化物は餅と水餃子で締めるなど、いかにも華北地区以北の地域性が感じられる料理だ。
 帰り道、中国人留学生の帰国ラッシュで妻の航空券が取れなかったと話すと、中国の親たちは状況が分からないから、不安なのだろうが、過剰な反応だと思うと呂君は話した。勿論彼の家からも帰るように言ってきたが、彼は帰るつもりはないという。それよりも、震災の被災者へのカンパを奨学金から捻出したといった。「日本政府のお金をもらって留学しているのだから、こんな時に少しでも役に立ちたいから。」と言ってくれた。彼の志に感じ入ってしまった。