中谷風の瀋陽日記

 梅雨
 日本はいま梅雨の真っ最中のようだが、瀋陽も連日雨が続いている。今日も、太極拳の練習に行こうとして、小雨の中を自転車を転がしていたら、途中から本降りになってきた。降ったり止んだりとかなり勝手気ままな雨の降り方である。アユさんが学生に聞いたら「毎年こんな感じだ。」とのこと。「梅雨はないっていうけど、絶対あるわ。」と彼女は断言した。
 家人によれば、瀋陽の方から北海道まで低気圧がいくつも連なっているそうだ。だから、毎日雨模様の天気予報なのだ。
 木々はすっかり緑を濃くしている。3月末に来たときは、黒褐色の地面に覆われて殺風景だったこの辺りも、いま上は柳の枝が互いに入り組んで、道路を緑のトンネルのように覆っているし、地面は雑草が生い茂って、一面に緑を打ち蒔いた様な色彩である。どこにその緑が潜んでいたのかと思わせるような一斉の変化なのだ。
 それで思い出したことがある。この国では、雑草まで植えるのかとびっくりしたことがあった。市場に行く途中に広い産業道路を通るのだが、早朝から人足たちが木を植えたり、下草を刈ったりと、毎日道路脇の樹木の手入れをしている。ある時、トラックが数台並んで止まっていた。積んでいるのは、雑草としか言いようのないマット状の草である。芝を植え替える時に見たことはあるが、厚さが10センチもあるようなのは見たことはない。それを、一面に地面に敷き詰めている最中であった