中谷風の瀋陽日記

 書
 書道を9月以降も継続することにした。久しぶりに連絡を取った、わがまま弟子の私を、先生は待っていてくれたらしく、仲秋の連休の最終日に指定した私の稽古に付き合ってくれた。9時半から12時まで、みっちり2時間半なのだが、決して退屈はしない。おまけに、臨書の材料にと、7点の作品を与えてくれる。曰く、「王羲之『蘭亭序』」、曰く「帰去来の辞」、「王維の絶句」「杜甫の七絶」「般若心経」そして「虎」の一文等々。少し多すぎはしないかと思うのだが、先生は、これでもかこれでもかと、出してくる。なければその場で書き上げてくれる。ほとんど楷書だが、中に草書と行書が1点づつ混じっている。部屋の中はもう掲示する場所がなくなってきた。そこで、「虎」の草書一文字は、事務室に掲示した。学生があれは誰が書いたのか、先生かと話題にしてくれる。実はそれが狙いだったのだ。
 その日は、先生の気分が良かったのか、大学の傍の食堂で昼飯を奢ってくれた。小龍包の2桶だったが美味しくてとてもお腹が膨れた。途中で先生が家に電話した所、奥さんがお昼を作って待っているらしく、先生はあたふたと帰って行った。あとには、栓を抜いた2本のビールが残った。一人で飲み切るのはなかなか大変だった。話し相手がいないと。