大聖堂ー日本日記

 ケン・フォレストの『大聖堂』を読み終わった。舞台は12世紀初頭のイギリス・ウェールズのキングスブリッジである。日本で言えば、藤原摂関政治の末期に当たる頃だろうか。中世的な舞台設定と人物設定の中で、近代的な恋愛感情や復讐譚に満ちていて、読むものを退屈させない。実は、NHKのBSの映像を以前に見ていたのだが、やはり、翻訳物だが原作を読むのは格別の味がする。何がと言うと、特定はできないのだが、描写の細部(といっても、ほとんどが飛ばし読みなのだが)がとても生き生きしている所などである。著者のあとがきを読むと、この作品の構想から仕上げまでに10数年の歳月を要したとのことであるが、それだけの細部の描き方が随所に見て取れた。特に、聖堂の天頂の屋根をどのような形にするかと言うことでは、半円球型から尖塔型に変わっていく課程が、理解しやすく丁寧に書かれていた。作者が最も研究を重ね、心血を注いだ部分であるからだろうか。小説作法として、注意しておきたいことだと思われた。