デモー瀋陽日記

 
 9月18日は「柳条湖事件」の起こった日である。勿論、関東軍の謀略によって惹起された事件であることは歴史的事実である。
 瀋陽にはそれを記念する「9・18歴史博物館」があって、毎年、この日の9時18分に凡そ3分間、サイレンを鳴らして、記念行事を行う。
 「国恥を忘れず、歴史に学ぼう」というのが大体のスローガンであった。昨年か、記念の鐘を設置したことが話題になっていた。しかし、今年は違う。16日の段階で、かなり激しくなったデモが、瀋陽では、18日に再燃した。

反日デモ柳条湖事件記念式典の瀋陽 100人が参加
毎日新聞 9月18日(火)11時28分配信
 【瀋陽・米村耕一】柳条湖事件の現場に建つ中国遼寧省瀋陽市の「9・18歴史博物館」で18日午前、事件から81年の記念式典が開かれた。発生日にちなんだ午前9時18分(日本時間午前10時18分)、市当局の呼びかけにしたがって、市内九つの道路と18の大通りを走る車は停車し、防空サイレンとともに約3分間、クラクションを鳴らした。

 博物館前では午前8時半ごろから数千人の見物客が詰めかけた。これとは別に100人前後のグループが「日本帝国主義打倒」と気勢を上げたが、1000人近い武装警察や公安関係者が大規模デモ化を抑え込んだ。瀋陽の日本総領事館近くでも同日午前、反日デモが始まり、約100人が参加した。
 中国各地の反日デモが暴徒化したことを受け、市公安当局は17日に「市民の合理的な抗議や愛国の表現は尊重するが、愛国の名を借りた暴行、略奪行為は徹底的に取り締まり、決して寛大な処置はとらない」とする通知を市民に出していた。このため、市内では18日正午時点で大きな混乱は発生していない。最終更新:9月18日(火)12時46分

 また領事館から日本人会会員に向けて次のような注意が促された。
《平素は瀋陽日本人会の活動にご協力いただき、誠にありがとうございます。
瀋陽日本総領事館より以下のご案内を頂きましたのでお知らせ致します。

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1.9月18日13時現在、当館周辺において断続的に抗議デモが発生し、当館に対して投てき行為があり窓ガラスが破損する状況が発生しております。つきましては、在留邦人の方々におかれましては、危険ですので、当館周辺には絶対に近づかないでください。
2.なお、在留邦人の皆様には以下の諸点にご留意の上、引き続きご自身の安全確保に十分ご注意下さい。
○不要不急の用務で当館を訪れない(当館にご用がある方は、念のため事前にご連絡ください)。
連絡先:024−2322−7490(当館代表電話)
139−4002−3370(当館緊急連絡電話)
○外出する際には周囲の状況に格別の注意を払い、広場など大勢の人が集まるような場所では特に注意する。実際に集会やデモ行進が行われている現場には極力近寄らない。
○一人での夜間外出は控える。
(また、酒場、ディスコ等夜間人が集まる場所は避ける。)
○昼間であっても、周囲に注意し、日本語で大声で話をする等は控える。
○当館や在中国日本国大使館、外務省海外安全ホームページ等をチェックする。
○一般的な行為(野外での撮影、スケッチ等)でも場合によっては中国では非合法となる場所もあるので注意する。
3.なお、事件に巻き込まれたり、関連情報を得た場合には、
当館緊急連絡電話(139−4002−3370)までご連絡ください。 》

 こんな警告を貰うと、のんきな私も少し注意しようかなと思うようになった。
 後日、日本からの連絡によると、NHKニュースなどで大きく取り上げられていたそうだ。だから、「ご主人大丈夫ですか」などといった言葉をあちらこちらから貰ったそうである。こちらは勿論「だいじょうぶ!」だが。
 今回の問題で、大きな鍵になるのは、庶民レベルの反応である。多くの人が、今回のデモの行き過ぎには眉を顰めてはいるが、また、殆どの人が「島の国有化」を進める日本政府に腹を立てている。
 以前にも書いたが、中国人にとって、「釣魚島(魚釣り島)は中国のもの」というのは国民的な常識になっている。その根拠はカイロ宣言ポツダム宣言にあるのだが、このことは、歴史問題で考えてみたい。
 今回の動きで最も気になったのは、これまで静観していたような
庶民(私が太極拳を練習にいっている老人グループなど)にも、島の問題について質問されたりする。質問する人は、いかにも憤慨に堪えないという様子であった。私は、この複雑な問題について、中国語で受け答えする自信が無かったので、「わからない。」としか答えようが無かった。また、学生達の殆どが、困った事態に対して、私が何を考えているか知りたいような動きもあった。機会を見て、話をしようかなと思う。
 今回のことで、坂田亮太郎氏(日経新聞北京支局長)の記事(日経オンラインサービス)がとても参考になった。