莫言ー瀋陽日記

 中国の作家・莫言氏のノーベル文学賞受賞が決まった。村上春樹莫言か、どちらが受賞するだろうかと、日本のみならず中国のネットも注目していた。私にすれば、どちらも好きな作家であり、どちらが先になるにしても、いずれは、両者ともに受賞するに違いないと考えていた。
 日本人サイドでは、村上でなくて残念と思う面もあるかも知れないが、莫言氏に決まって良かった面もある。というのは、朝日新聞などでは紹介されているが、昨年のノーベル平和賞劉暁波氏が選ばれたことでは、中国政府は、政治的な意図を持った表彰だと噛みついたものだ。しかし、今回の莫言氏は、中国作家協会の副主席であるだけに、政府としても、評価せざるを得ないだろうといわれている。事実、中国のネット「百度」などでは、トップニュ−スの一つとして扱っている。この反応を見ると、国民の中は勿論、政府内部にも容認する、むしろ歓迎する動きが広がっていきそうな様子である。
 中国国籍で中国に在住している人で初めての公に認められる受賞となった。何はともあれ、めでたい。
 ノーベル賞については、前の日に、日本の山中教授のiPS細胞に関する受賞の記事を紹介し、医学の発展に与える影響などを話し、将来諸君の中から、ノーベル賞を貰うような研究者が出て欲しいと述べたところだったからだ。
 莫言氏の発言を聞いて、さすがだなと思った。
ノーベル賞はとても重要な賞だが、最高の賞ではない。選考委員の意見を代表したものだ。私は自分の仕事に満足しているし、今後も書き続けるのみだ。私の作品は、中国特有の文化や民俗を描いてきたが、広い意味で人を書いている。この仕事は民族や地域を超えたところにある」(以上朝日新聞から)ー莫言(言うこと莫かれ)というペンネームの面目躍如としたコメントではないか。
 莫言氏、本当におめでとう。そして、中国人の学生諸君、おめでとう。ぜひ後に続いて欲しいものだ。そして、仏教大学名誉教授の吉田富夫先生、先生の労苦のいくらかが、今回の受賞で報われたようですね。