浮草の夢3

2 何点かの説明
その一、本文は小説ではなく、私自らが経験したことであるので、第一人称で叙述した。だが、観客の各位が“多情”な人が書いた小説だと見なしても構わない。私は観客の評価など気にしていないのだから。
その二、もし自分の主観的な感慨であるならば私は文字ではっきりした注釈を与えられるし、そうで無ければ、全ては真実の情況のある種の再現である。皆さんが事件の真実性に疑いを差し挟んでも構わないが、私はできる限りの客観と真実を尽くして事実を述べる権利を留保するものである。
その三、本文がスキャンダルを引き起こすことによって起こる、各種の良くない結果や法的責任及び社会的責任などに対する心理的な準備や事件当事者が私を告訴しようと思うことまで全てを引き受けるつもりだ。私は今、告訴と人身攻撃を待っている。

 一 楽しくもない出逢い
・ 衣先生(ここでは、まだ彼のことを衣先生と呼ぼう。)と知り合ったのは2011年3月末のことだった。それ以前に彼の名声は聞いていたが、研究の領域が必ずしも一致していなかったし、彼の学術もそれほど理解していなかったので、彼については話せるような人となりや世間的な知識を持ち合わせてはいなかった。もし時の流れが2011年3月29日の前に遡れるのなら、私も彼も楽しくしていて、少なくと“私たち”のことで精力を浪費するようなこともなかっただろう。