瀋陽日記ー三行手紙

 北京に行って、いろいろな人に会ったことで、たくさんの示唆と刺激を得た。中でも、作文教育についての多種多様なアプローチの仕方を教えて貰った。その中の「三行ラブレター」というのに早速挑戦してみた。
 対象は、二年生の日本語クラスだ。まず最初に、「ラブレター」の相手は誰にするかで、半分くらいの生徒に直接聞いてみた。最も多いのは当然「父母」「両親」であった。高校二年生の段階では、また寮生活で、恋愛禁止の中国の生徒に取っては極く当たり前の結果だと言っていい。次に、「友人」「祖父母」「アイドル」「アニメキャラ」「自分」「先生」と続いた。そこで、全員に自由に書かせてみた。できあがったものから見てくれと持ってくる。まだ考え中という子もちらほらいる。次の時間までに必ず仕上げようと言って1時間目は終わる。
 先週の出張で、このクラスは1日2時間になってしまったが、まとまったことをするのには丁度良い時間割になった。だから、2時間目には、6人一組の班に分け、それぞれの班で合評させ、入選作を2篇ずつ選んでもらった。
 最後に、代表選手14名に教室の前に出て発表して貰った。僕には聞き取りにくい内容でも、生徒は意外に良く反応していた。発表となるとみな緊張していたようだが、十分盛り上がった。一人2票の投票で、1,2,3位を決めた。優勝者は日頃余り目立たない男子生徒で、28点を獲得した。2位も男子で23点、3位も男子で18点だった。では、1位から紹介しよう。
 ☆☆☆1位(男子)
 暑くなりましたが、お変わりありませんか。あなたを見るたびに私の心が動いています。
 あなたは雨のように、この荒れ地を潤しています。
 風立ちぬ。はるか遠方のあなた、私はずっとあなたが帰るのを待っていました。
 ☆☆2位(男子)
 拝啓 愛しい人
 風光る。私のそばに舞い降りる。天使のごとき君。花弁のごとく舞う。
 敬具 君を思う僕
 ☆3位(男子)
 人混みであなたの顔を見て、ひとりで恋しく思い始めた。あなたを恋しく思うとき、あなたは心の中にいるのだ。あなたを恋しく思うとき、あなたは目の前に浮かぶのだ。あなたを恋しく思うとき、あなたは頭の中に存在するのだ。あなたを恋しく思うとき、あなたはゆっくりと近付いてきたのだ。
 
 成績を坡表したとき、女子から意外そうな声が上がった。男の子の方が却って率直に真情を吐露したからだろうか。