瀋陽日記ー三行手紙2

 前回の三行ラブレターを成人を相手にやってみた。場所は、私たちの会の研修会で、時間を埋めるための泥縄の「ワークショップ」としてやってみた。目的は作文授業の活性化ということにして、種明かしの実践報告は最後にした。
 学校の場合と同じ手順にした。まず愛する人、愛しい人を答えてもらった。「両親、妻、恋人、孫、友人×2、娘、家族×2、学生、子ども達、正直な人」などが上がった。そこですぐに原稿用紙に書いてもらった。ここは大人で、日本語に熟した人ばかりだから、添削の時間は省ける(日本人13名、中国人2名、いずれも日本語を用いる仕事に従事している)。しかも今回は、記名でも無記名でも良いことにした。約10分間の記述の時間の後、作品の裏に番号を振り、シャフルして5篇ずつ3グループに分け、それぞれのグループで読み合わせ、最も良いものを2篇、入選作として発表して貰った。
 ではどんな作品が出たのだろうか。作品番号順に書く。(原稿の表記ミスなどはすべてそのまま)
1 ゴウちゃん元気。もうすぐ3歳のお誕生日だね。お話もいろいろできるようになったでしょう。早く会いたいな。
2 今、何してる。何もしていなかったら一緒に何かしようか?何か飲みたい?
  それとも食べるほうがいい。いい天気だから散歩でもよいね。
  顔を合わせない時は写真をみて、こんなことを言ってるよ。
3 愛するという言葉は、好きではありません。でも、いつも応援してくれることに対する感謝の気持ちはゆるぎないものがあり、心からありがとうと言いたいです。
4 大人になったあなたへ 今あなたは、この手紙を読めていますか。もしここに書かれている日本語が分からなかったとしても、最後の4文字だけは覚えておいてください。   〇〇 〇〇(名前)
5 私の存在があなたには重荷になったのでしょうか。それとも、他に思う人ができたのですか。
  あなたといない日々は胸が傷くなる時間です。あなたは今も私の心の中に住んでいますよ。
  きっと死ぬまで。署名
6 好き!でも好きという言葉だけでは足りない。
  私にできることはあまりないかもしれないが、あなたに笑顔を持たせる人になりたい。
7 「愛」という字は「かなし」と読むとか。
  愛は心を痛めるもの、悲痛なもの。
  その人が失われることを思うと、心が破れそうになるもの。No〇〇93
8 僕は日本を離れるとき、ちっとも寂しくなかった。
  僕たちは2年、5年だって会わなくても話した途端に一瞬であの頃にタイムスリップできるからだ。
  どんなに離れていても、どんなに時が経っても。
9 私を生れてくれて、私を育ててくれて、そしていつもそばにいて、私のことを守ってくれる。
  さまざまな言い訳で両親には何もできなかった私は、本当にその重い愛情に報えないだろうか。
  今晩こそ愛してるよという一言を言い出せるようにするぞ。  姓名
10 3年間は早いもので、今日でみんなと一緒に勉強するのは最後になってしまいました。思えば3年前、50音から始めてここまで来ました。よく勉強した人、まだあまり勉強できていない人。いろいろいますが、それぞれがんばってきたと思います。日本語の授業は今日で終わりですが、勉強はまだまだ続きます。せっかく日本語を勉強したのですから、日本、日本語、日本人についてもっとよく知っていってください。これからも皆さんの成功を祈ります。
11 あの地で出会い、あの地で付き合い、あの地でケンカし、あの地で生活をし、この地に来ましたね。でも、あなたの場所は私の横です。
12 素朴でお人よしのあなた。他人を思いやる気持ちを強く持ち続けているあなた。
   あなたの愛が私をいつも救ってくれる。
   私もあなたに同じものをあげようと思う。
13 「日本を案内してくれたお礼に人生すべてをかけて恩返しをしたい」という言葉を聞いたとき正直理解できなかったけど、今は家族を増やすことができたので、すこし恩を返してもらったと思います。最近はお互いに関心ないけどもう一度告白させてみせるから待っていて下さい。
14 いつのことだったか、テレビドラマで見たんだけけれど。夫が泥棒するためにある家に忍び込む。妻はその家前で見張する。妻は夫に「そんなことは止めなさい」とは言わない。全受容なんだ。愛することは。
 「君は僕の太陽だ」なんて甘いことは言わないよ。
15 あれからどれくらい時間が経過したのか、いまどうしていますか?
   もっともっと気を使うべきだったと、いつも反省しています。