中谷風の瀋陽日記(6月)

 書 法
 友達になったシュさんの紹介で書道教室に通えるようになった。大西門の近くの書道物品販売店に案内され、書道の道具一式(勿論安いもの)を買い揃えた。その後、書画の露店市のような所に案内され、ある一角に立ち止まった。そこの店主が、先生のひとりであった。そのチョウ先生の千字文の作品とコピーしてあった新聞記事の「紅楼夢全巻の筆写完成」という記事が面白かったので、その先生に習おうと思った。その先生が教室を持っているかどうか聞くと、持っているという。水曜日は生憎駄目だったので、木曜日にした。木曜日に瀋陽工業大学に来てくれということで、バスの路線などを書いてもらった。ここまでが前段なのだが、結論を先に言うと、その先生とは別のリュウ先生の教えも受けることになった。
 月曜日に下見をして、木曜日に出かけてみた。バスを2台乗り過ごして、大学に着いたのが9時過ぎだった。13階に行くと書道の会の案内があり、恐る恐るドアを開けて「チョウ先生は?」と声を掛けてみたが、先生が見当たらない。中心人物らしき人に近づいて話そうとすると「まあ座れ」という。「なぜここに来たのか」と聞いてくれているようだが、うまく答えられない。やっとのことで、「書法(書道)の勉強がしたい」と話すと、と意味が通じたらしく、「じゃ、どれくらいできるのか」と聞いてきたので、手元に持ってきていた「柳体『千字文』」を見せると、「それはだめだ。今流行ではない。」と仰せだった。その方が、その会の会長のリュウ先生だった。その後約1時間、書と中国の歴史の講義を聞いて、さらに2、3の文字の書き方の指導があって、初めの日のレッスンは終わった。柳体ではなく、欧体で学ぶことになった。(ここのところは、後日もう一度詳しく述べたい。)