中谷風の瀋陽日記

  匂い
 中国に来てすぐに感じた匂いは、乾燥して埃っぽい黄砂の匂いであった。そして、久しぶりに雨が降った後には、特有の土の匂いが漂ってきていた。しかし、今は、青々とした草の匂いも幾分漂うようになってきている。
 この辺りは工場地帯だが、かつてのような石炭が燃えるような臭い(何十年ぶりかで撫順で嗅いだ。)には縁がない。工場と言っても、製薬会社の工場がやたらと多いのだ。ただ一つ、学校の南側には電力会社が経営するボイラー工場がある。ここは冬場に南部の各家庭や工場、事業所などに暖房スチーム(?暖気)を送るために石炭を燃やしているのだという。冬にならないとわからないが。
 夏の匂いは、果物の匂いなのだが、白塔の市場に行く途中に幾つかのごみ置き場があって、そこから漂ってくる臭いはかなり強烈である。野菜や果物が腐った匂いが流れてくる。特に雨の後などは、市場の真ん中の通りが泥水で覆われていたりして、不衛生であることはこの上ない。その上に臭いなのだ。冬場には想像もしなかったハエなどが増えて、食品の周りに飛んでいたり、いつも自転車を止める鶏肉店の後ろには、けっこうなハエが群がっていたりする。これが、伝統的な(?)中国の田舎町の市場だろうかと妙に感動したりする。
 不思議なことに、ハエを見ても、以前ほどは嫌な気もしなくなってきている。これも馴化のせいなのか。嗚呼!(この字を使うのは何年振りか?)そういえば、子供のころ、各家庭にはハエ取り紙などが吊ってあって、ハエ叩きも常備品であった。そんな場面を経験してきているからかな、あまり驚かないのは。鈍感になっただけやったりして・・。