中谷風の瀋陽日記

 名所①(本渓水洞)
 我が愛人が瀋陽に来ている間に、2か所の名所を訪れた。一つは「本渓水洞」そしてもう一つは撫順の「清永陵」である。この2か所にはそれぞれ別の女子学生のグループとその親たちが付き合ってくれた。おかげで、日本人観光客には殆ど縁のない、穴場ともいうべきところを観光できた。
 本渓水洞は瀋陽から南東の方角に車で約2時間ほど行ったところに本渓市があるが、その近郊に大規模な鍾乳洞があり、「本渓水洞」として知られる。まずはじめに、乾洞と呼ばれる日本の鍾乳洞のようなものを歩くのだが、かなり荒らされていて、石筍や石柱といった鍾乳洞の定番の奇岩怪石が数えるほどしかない。おまけに、フィギュアのようなゴム製の恐竜が置いてあったりで、期待外れの感を持って次の場所に移動した。移動した先が地底の河だった。幅10mほどの河が静かに流れていてそこに20名ほどが乗る遊覧船が何十隻と繋がれていた。観光客は雨除けの防寒具を身に着け、船に乗り込んだのだが、そこからは、奇岩怪石のオンパレードだった。しかも、恐らく2キロ位に亘って、延々とこれでもかと言わんばかりに続く、途中から歓声ともため息ともつかない吐息を漏らすばかりになってしまった。それぞれに中国式に、「伏龍望天」と言ったような名称が付いているのだが、暗い上に、近視用の眼鏡をかけていたので、遠くは見えない。
 世界の名所の中でも地下水が流れている洞穴を船で延々と遡っていくのなどは聞いたことがない。まことに得難い体験であった。続いて、さらに得難い経験をその後することになるのだが、それは、後程。