中谷風の瀋陽日記

 本渓水洞?
 水洞の中は冷たく、水温と同じ5℃であった。これに備えて長袖の上着を用意していたが、お仕着せの厚手の防水衣なしでは、寒くて凍えてしまいそうだった。約20分の船旅が終わって、洞窟の外に出ると、まだ夏の日差しが暑かった。
 暫時、昼食休憩、手持ちのおにぎりと注文した羊肉湯(スープ)でお腹を満たした後は、5Dの映像を体験するまでしばらく公園内で遊んだ。5Dとは何のことはない。3D映像に加えて、座席が映像に合わせて動くのだ。座席が上下左右、変転極まりない。終わった時は正直ほっとした(元来、ジェットコースターなどには強くない)。
 映写ブース(小劇場)を出て、後続のメンバーを待つ間、近くの遊具で遊ぶことになった。見ると、TVのサスケなどに出てきそうな鎖の橋や丸太の橋がある。何人かの男が挑戦して、途中から後退したりしている。その奥を見ると、向こう岸まで張った鉄線に乗った滑車に取付けたロープを掴んで向こう岸まで一気に行く遊具に、30歳ぐらいの男性がターザンよろしく、片腕で行き帰りしていた。見るからに簡単そうで、次の人も、今度は両手でロープを持って、行き帰りしている。同行の学生の勧めもあったのだが、俄然やる気になって挑戦してみた。結果はなんと、言うもおぞましい。
 勢い良く飛び出した私の体は足が引っ掛かって途中で1回転し、こともあろうに、向こう岸の足場の1mほど手前で止まってしまったのだ。空中で幅跳びをするように体を煽ってみても、全く進まない。むしろ、下の池の中心に向かって帰っていく。やんぬるかな。ロープの手を放して、池に真っ直ぐ着水する以外に選択肢はなかった。
 腰まで水に漬かって、やっとの思いで帰り着いた私を、学生たちは、心優しく迎えてくれた。茶店で売っていた替えのパンツまで用意して。しかし、顔は言語に絶するという表情だった。同行していた愛人にこっぴどく叱られたのは言うまでもない。
 ああ、自分の歳を忘れていた。