中谷風の瀋陽日記

 脱北
 韓国映画クロッシング』を見た。日本人教師で貸してくれる人があって、先日借りていたのだが、今日の午前中にやっと一通り見た。(すべて韓国語。英語バージョンにできなかった。)監督は有名なキム・テギュン、主演はチャ・インピョ、シン・ミョンチョルとなっている。”クロッシング″(ハングル表記)は恐らく“crossing”の意味なのだろう。英和辞典には、横断歩道、踏切、反対、妨害などの意味が書いてあるが、私は咄嗟に“越境”と受け取った。しかし越境よりも、内容からすると“脱北”の方が言葉として知られている。
 北朝鮮北部の炭鉱町に住む、まだ若い夫婦と小学4,5年生位の男の子の家族の物語である。炭鉱労働者の夫とそれを支える妻、貧しいながらも、ささやかな幸せを近所の人々とも分かち合う生活が妻の突然の発病(病名はよく分らないのだが、結核ではないかな)で暗転する。夫は薬を求めて幹部などと掛け合うのだが、とても薬は回ってこない。一念発起した夫は脱北し、中国に出稼ぎに行く。何としてでも妻の薬を手に入れたかったからだ。別れの日、それまで対立していた息子とお互いが好きなサッカー(石ころサッカーだが)をして別れる。辿り着いた吉林省の材木工場で働いていた時、夫は飲食をも削って薬代を貯金する。そこへ中国警察の急襲、逃げる途中に大切なお金を没収されそうになる。グループで隠れている所に仲介者が現れ、“アムネスティ”か「脱北支援団体」と思しき者が入って、グループは瀋陽に、そして別のグループと共にアメリカ領事館に塀を乗り越えて逃げ込む。一行は韓国に、そして、支援者の工場で働く日々。妻の病気に効く特効薬を手に入れて、北との秘密の連絡を試みた結果、妻の病没を知る。残された息子は・・・・。ここから息子の物語が始まるが、これくらいで紹介は良いだろう。
 領事館の塀をよじ登るのは確か日本領事館だったよなと思いながら見ていた。途中で何度か泣きそうになった。DVDの宣伝文句に「韓国、中国、モンゴル3か国の秘密ロケ」「8000㎞の大長途」(多分こんな意味かな)とある。
 このDVDは韓国で買ったものだそうだ。残念ながら中国では販売されていない。(恐らく、北との国交を慮って。)
しかし、一見の価値はある。ぜひ日本語のアフレコ若しくは字幕付きバージョンが欲しい。