運命の人ー日本日記

 山崎豊子『運命の人』を読んでいる。テレビドラマでも評判になっていて、国会の論戦でも紹介されたりしたらしい。
 モデルになった毎日新聞の西山記者のことは今でも鮮明に覚えている。沖縄返還交渉をめぐる密約を暴いたことで、大問題になったことを覚えているが、小説を読み直していて、当局の密約暴露に対する復讐とも取れる西山記者の逮捕、起訴や外務省の事務官との密通事件に矮小化して「知る権利」という争点を巧みにずらしていった権力の側のしたたかな戦略などが、改めて思い出された。
 小説の第3巻「第12章最高裁」辺りでは、最高裁の有罪確定によって打ちひしがれ、荒んでいく弓成記者の姿が描かれるが、権力が体制維持のためなら庶民の人としての尊厳や人生の意義などを奪い去っても何の痛痒も感じてはいないことを思い知らされた。
 図らずも、昔、教え子が韓国の軍事政府によって「政治犯」に仕立てられたことなどを思い出していた。
 折しも、昨日(2月8日)付けの朝日新聞に次のようなベタ記事が載っていった。
  日米密約を巡り西山氏に謝罪 −岡田副総理
  外相時代に日米間の密約の存在を認めた岡田克也副総理が7日の参院予算委員会で、1972 年の沖縄返還密約を示唆する機密電文を入手し、国家公務員法違反で有罪が確定した元毎日 新聞記者の西山太吉さん(80)について「本当に申し訳ない」と謝った。
  みんなの党小野次郎氏が同事件をテーマとした放映中のテレビドラマにからめて密約を 認めた感想を聞いたのに答えた。「国家の密約という問題の中で犠牲者になった一人だ」と述 べた。
 このベタ記事の紹介の仕方に、40年の年月の重みと「落差」を感じている。一方、読売新聞のナベツネ氏がテレビの描き方が気にくわないと噛みついている記事も目にした。ナベツネさんもまともな記者だった時期はあったのだ。しかし、権力を握った現在は(?)。