歯科ー瀋陽日記

 歯があまり丈夫でないので、この地で「歯のトラブル」に見舞われたらどうしようと不安だった。帰国中も歯医者に行ってチェックしてもらった。特に手入れするところもないと言われ安心して中国に来たら、昨日の朝、食事中に右下大臼歯の虫食い部分を埋めていた金属がポロリと取れた。「ええっ?」と金属を手にして面食らった。このまま夏まで我慢していたら、治療跡の虫食いがもっと進行するだろう。かくなる上は、頼るべきは「ハクさん」、「歯医者を紹介して」と泣きついた。口腔科の中国医(中医)を知っているからと紹介されて、今日出かけた。もちろん通訳に日本語の先生が付いてきてくれた。この先生の車で青年大街を北上し中医の病院に着いた。さすが中医、病院全体が漢方薬の匂いに包まれている。事前の連絡があったのだろう、待っていてくれてすぐに診察。1分もせずにこの病院では無理だと判断を下してくれた。「西医の専門医」にかかるべしとの託宣で、中国医科大学の口腔科専門病院を探すことになった。付き添いの先生も場所が分からない。友達に電話して、何とか場所を聞いてたどり着いた。毛沢東像のある中山広場の近くらしいが、もとより私が知るはずもない。中山広場のやや北東の方向に50㍍ぐらい入ったところにその病院はあった。よく行く旅行社のやや裏手ぐらいである。車も患者も混んでいた。受付で診察する先生のランクを決めて、申し込むのだそうだ。標準7元、助教授8元、教授9元、有名専科(専門家)54元と書いてある。どうしてこんなに違いがあるのかよく分からない。とりあえず、両端を避けて、助教授か教授でと申し込んだら、順番待ちがとても多いよときた。じゃ!と、最高級に申し込んだ。
 待つこと10分、意外に速く順番が来た。案内された処置室には20台ほどの処置台があった。入り口近くの一台に腰掛けると、医者は「どうしましたか」と日本語で聞いてくれた。そのひとことですっかり安心した。歯を消毒し、インプラントを磨き、接着剤をつけて歯に被せた。はみ出した接着剤を取り除いて処置は終了した。これもほんの10分程度だった。助かった。帰りしなに医者に聞くと愛媛大学の歯科で勉強したと言っていた。愛媛大学が急に輝いて見えた。
 さて、料金は104元だった。どういう計算になるのか分からないが、都合111元で元通りにはなった。最高級でも安いと思った。もちろん自費だが。
 忘れないうちにもう一つ。受付で中国医科大学附属口腔病院「門診病志」という名の小冊子を貰った。通用門(急)診病歴と括弧で囲んで書いている。氏名、性別、年齢、工作単位(住址)、聯系電話、過敏史などを書く欄がある。中には初診病歴の項目と複診病歴の項、補助検査粘貼の項がある。初診病歴は先ず、科別、時間、主訴、現病史、既往史、検査、補助検査、診断、医生(医者)(簽)章、治療(処置)、医生(簽)章と記されていた。カルテのようでいて、連絡帳のようでもある。参考のために書いておく。