銃ー瀋陽日記

 急に「銃」の話になったのには、理由があるのだが、今はさておいて、ことはフィリピンでの話である。商用で出かけていたSさん、仕事を終えた後のキャバレ-でのこと、ホステスに囲まれて大騒ぎをしていたところへ男が近づいてきていきなり胸ぐらを掴んだ。ホステスを独り占めにしているのがお気に召さなかったようだ。売られた喧嘩はは必ず買うSさん、相手を殴り倒して、最後に倒れた相手の腹に思いきり蹴りを入れたら、男は腰から拳銃を抜き、立ち上がりざまにかまえてきた。これはやばいとSさん店を飛び出して、左へ左へと回ったところ、相手も慣れたもの右へ右へと回って、店の裏手で出くわした。出会った瞬間に至近距離から2発撃たれた。双方酔っていたから、当たらなかったものの、危険を感じて、近くの警察署にかけ込んだ。ところが、ひるむかと思った相手が一緒に警察になだれ込んできた。それもそのはず、相手は現職の警部だったのだ。Sさんすぐ署長を呼んで、身分を明かし、問題にするというと、署長「仰ることはよく分かる。しかし、今ここで彼を首にすれば、彼の親族から付け狙われることになるが、あなたはそれで良いか。』と説得にかかった。やむを得ず、その場で握手して「手打ち」とした。その男は、Sさんがフィリピンに行くと必ずボディーガードとして付き添ってくれることになったそうだ。文字通り「刎頸の友」になったのである。