銃2ー瀋陽日記

 Sさんとは、私達の同業者なのだが、あまり教師臭くない。むしろ、教師とは真反対の人と言っても良い。
 これも、Sさんのフィリピンでの話である。
 1週間に2回は、近くのカジノに出入りしていたSさんは、博打ごとでは負けたことがないと豪語していた。幾分法螺が入っているかも知れないが、話を聞くと一応頷ける。曰く「熱くならないことだ。」その逆の例が次の話だ。
 その日はあまり付いていなくて、早々に切り上げて、周りを見回していたら、顔見知りの日本人が負けが込んで熱くなっていた 。
「1千万円ほど負けている。絶対に取り返してみせるから、いまから銀行で金を下ろしてくる。」と熱くなって息巻いている。Sさん「止めといたほうがいい。今日は付いていないから、日を改めたほうがいいよ」とアドバイスするが、男はカジノの従業員をボディガードに連れて銀行に駆け込んで、大急ぎで2千万円を調達した。現金の入った鞄を抱えて車に乗り込もうとした時、機関銃で蜂の巣のようになっていた。周りにいたはずのボディーガードはその瞬間、一人もいなかった。銃撃した男が鞄を持ち去って暫くしてから、警察が駆けつたのだが、犯人は勿論挙がらなかった。
 この事件は日本でも報道されたらしい。男は現役の暴力団員で、訳あって当地に逃れていたときのことだそうだ。