長春3−瀋陽日記

 後日、妻に話すと言下に『ねじまき鳥クロニクル』と返ってきた。概して、村上の小説の題名は風変わりで記憶に残りやすいものなのだが、この時ばかりは、ずっと喉に引っかかっていてなかなか出てこない言葉のようだった。
 動植物園について入場しようとして、自分の年齢のことが思い出された。ここでも、入場料は40元なのだが、60歳以上なら半額(20元)と書いてあった。迷わずパスポートを見せて、半額の入場券を貰った。傍にいた同僚が慌てだした。「パスポートをホテルの部屋に置き忘れてきた。危うく忘れたままでいるところだった。」彼はもう1日長春に残るので、主な荷物はホテルに残してきていたのだった。

 動植物園と称するだけあって、敷地は広大なものであった。サファリーパークのように、動物たちは地面の上を歩き回っている。その近く遊歩道を観客がたどりながら、鳥類や偶蹄類は近くで、熊や虎といった猛獣類は離れた高台から見るように設計されていた。
 ここでは割と自由に観客が餌やりをしている。ヒグマの一種だと思われる熊が餌をねだって、二本足で立ちあがって、催促している。
 森林が全体を覆っているので、虎などが森林に入ると、周囲と同調して見分けがつきにくくなる。

(写真中央、やや左下に遠ざかっていく虎の背中が僅かに見える。もっと近くでも見られたのだが、風景に溶け込む写真をと狙っているうちに遠ざかってしまった。)