威海ー瀋陽日記

 今回招待してくれた二人は、威海の出身で、彼の方は威海の郊外の農村の出身であり、彼女の方は市内の卸売りを仕事にしている家庭の出身である。この二人の接点は高校である。市内の有名校二中の同級生であり、私との接点は神戸の日本語学校である。
 事前の話で私達がふつうの家庭での暮らしが分かるような宿泊先と指定したため(というのは、あまり気遣いがないようにというつもりで)考えあぐねた末に、彼は姉に頼んでマンスリーマンションを借りてくれていた。なるほど、平均的な家庭の少し下のレベルの部屋だと聞いたとおり、二〇畳ほどの一ルームとキチン、シャワー・トイレ室、二畳ほどのエントランスがある。部屋にはダブルベッドとベッドに転用できるはずのソファーや衣装箱などが備え付けてあった。
 体験のためとはいえ、わざわざ用意してくれた、彼に感謝しつつも使い勝手が分からずにいくらか苦労することになった。というのも、温水器のスイッチが入らずに、シャワーが使えないということが分かった。急遽、銭湯に行こうということになったのだが、彼が学生の頃行き慣れていた銭湯なのに入り口で身分証明書の提示を求められ、たまたま所持していなかったために、銭湯もあきらめざるを得ないと言うことになった。彼は気遣いの余り、かなり参っていた。窮すれば通ずで、台所でお湯を沸かして、お湯で身体をふいたらすっきりした。大騒ぎするほどのことでは無かったのに、彼には気の毒なことをした。
 部屋の下は幼稚園、上には英語の塾などが入っている建物であった。翌朝は幼稚園の体操の音楽で目覚めることになった。