大使ー瀋陽日記

 丹羽大使の解任が既定のこととなって、もう2週間ほどになるが、私には納得のいかないことが多い。
 事の発端は、6月7日、イギリスの有力紙フィナンシャル・タイムズに掲載された、丹羽大使のインタビューの内容にある。
 石原慎太郎東京都知事の進める尖閣諸島の購入計画について、丹羽宇一郎駐中国大使が「もし計画が実行されれば、日中関係に極めて深刻な危機をもたらす」と発言したと報じられた。
 そもそも、この問題は明らかに石原都知事の仕掛けから始まったことであり、石原以下自民党右派の連中が機会をうかがっていた「ナショナリズムキャンペーン」の1種である。それは、「都が購入する」という計画を知事が、ことさらアメリカで公表したこと、それ以前に「これを公表したら、政府や官僚は慌てるだろうな」と記者団に語っていたこと、その後の事態の進行を予測した確信犯的な行動であったことでも明らかである。
 そもそも、地方自治体の首長が、国政や外交を左右するような重大な問題について、決定したり、関与したりできるものなのだろうかというのが僕の当初から持っている疑問である。
 外交の当事者でも無い人間が、外交上の重大問題について、容喙したりすることを許していては、国の外交そのものが立ちゆかなくなると感じたのだ。だから、僕にとって丹羽大使の発言は至極もっともな発言に受け取れたのだ。(続く)