香川ー瀋陽日記

 この映画のロケ地を調べるのに時間がかかった。徽州(旧称新安)と記されていたのだが、昔見た記憶だけがあって、現在の道路地図ではなかなか探し当てられなかった。結論を先に言うと、景勝地黄山の近くにある安徽省黄山市のショー県(漢字が探せない)にある。ショーの字は合+羽+欠の字である。徽城が行政の中心地であり、秦漢唐代を通じてショー州と呼ばれてきたが、宋の徽宗の宣和三年、徽州と名を改めた。安徽省の省名称の由来1字をなす。茶の名産地でホンチン茶の名で知られる。伝統工芸として墨と硯の生産が盛ん。徽墨、ショー硯として知られる。人口48万8000人(1990年)。
 原作の舞台は、山東省高密県であるようだが、霍監督は昔の風情を残す場所を探して、この地をロケ地に定めたようだ。
 だから、あの清冽な水が流れていた河は銭塘江に注ぐ河のようだ。
 映画の最終の場面で、河の側の道をジンハーとヌアンが歩いている。ヌアンが街で住めるようにするために、ジンハーが案内しようとしているのだと思う。そこに、娘を抱えた香川が追いかけてきて、言葉にならない言葉で、娘を二人に託して、もう返ってくるなと言っているようだ。その言葉で、揺らいでいたヌアンの心が落ち着いて、夫(香川)を労るようにもと来た道を村の方に帰っていくのだ。
 言葉が通じないからこそ、必死の思いが託された表情が無限の言葉を語っているように感じた。
 演じた香川も秀逸であった。