北京6ー瀋陽日記

 悪夢のような夜だった。30分置きに肺をえぐるような咳、肺胞ごとに納豆の菌糸が絡みついていて、咳とともにその一部が剥がれるような咳、背中を丸めてエビになっているとその背中を叩きつけるような咳、咳にもいろいろなタイプがあることを思い知らされた。6時頃には、ベッドを出て、前夜は寒くて剃らなかった髭を当たって、8時半きっかりにロビーへ下りた。Kさんは先に待っていた。「今来たばかりだ」といったが、それでも、2,3分前には来ていたようだ。カウンターで食券をもらったら、kさんも食券を2枚もらって、1枚を部屋に持っていった。ドアをノックしているのを少し離れてみていると、バスタオルを胸に巻いた女性が顔を出して、チケットを受け取って、一瞬こちらを見た。ドキッとした。
 食堂に入って驚いたのは、客の9割は欧米系の人たちだった。「北京古韵坊怡景酒店=Beijing Traditional view Hotel」という名前が示すように、純中国風のところが欧米系の人びとには好ましいようだ。聞くと「中国に来てまで、westernstyleのホテルに泊まりたいとは思わないから」とKさんは解説してくれた。勿論、値段がネットで300元程度というのが、値頃感を与えているのかも知れない。それに、恐らくは、彼らのガイドブックなどには紹介されているのかも知れない。
 さて、朝食はどことも同じようなメニューの中から、パンを2切れと中国風ピクルスといった野菜、ゆで卵、オレンジジュースとホットミルクという取り合わせにした。(勿論ビュフェ方式)

(写真は朝の胡同の様子。昨夜の賑わいがうそのようだ。)


 暫くすると、先程の女性が現れた。紹介によると、撫順の高校で英語教師をしていたスェーデン女性でHさんと言った。息子と娘が先にきていて、今日ここで落ち合う約束をしていたのだという話しだった。そういえば、先程、Kさんと立ち話をしていた可愛い17歳ぐらいの女の子がこちらに近づいてきた。側には少し年長の息子が立っていた。女性も男の子も素晴らしく背は高いのだが、少女のほうは少し小柄でまだ華奢な骨格であった。きっと父親似なのだろう。