天壇4−瀋陽日記

  祈年殿の南には皇穹宇があるのだが、途中、係員がいて入場券を検札していた。つまり30元の共通入場券の端が各エリアごとの半券になっていて、それを一々ちぎり取るわけである。寒風の中で一日中立っているのもなかなかの重労働だろうと思うが、彼女らはお互いに話し笑い会いながら切符切りをしている。至って屈託がないように見える。どこにも、それなりの労働があるある。ましてや、高齢者の職場となると、極めて少ないようだから、この仕事に就いている人は見かけよりも若いのかも知れない。
 皇穹宇は祈年殿の土台部分だけのような構造物だった。ただ、8角形の土台が積み重なっているようで、中心にはなぜか円形の大きな石が据えられていて、その上に乗って記念写真を撮っている人が多い。
 更に南進すると圜丘に行き着いた。南の入口から入ると、一面、方形の壁に囲まれていた。その壁は呼びかけると応える壁として有名だとか。多くの人が声を出して何事かを叫んでいる。僕も試みてみたが、声が小さすぎたのか、返答がない。壁に向かって物事を話している姿は、イスラエル嘆きの壁みたいだなと突然思いついた。
 この日は、すでに正午頃なのに相変わらず寒い、すぐ南に門があって外に出られるのだが、東門まで引き返すことにした。
 東門の近くのレストランで、温かい紅茶を頼んだ。冷え切った体を温めないと、このままでは宿舎に着くまでに凍えてしまいそうだった。