浮草の夢4

・ はっきりと記憶しているのだが、面接試験のあの日、私はライトグレーのハーフ袖のスーツに白のブラウスを着て、ハイヒールを履き、ダイヤをちりばめた細いヘアピンを髪に挿していた。西西友誼賓館(註①)を出るときに客室の鏡に向かって、自分を見積もってみた。「ウン、なかなかのもんだ。綺麗で、知性があって、腕利きで、外見も問題なし。」辟才胡同(フートン註②)の信号のある交差点を突き抜けて一陣の風が吹いてきたので、やや肌寒さを感じた。まだ初春なので路上には私のように薄着の人は多くなかった。私は無意識に足取りを早めた。
註①西西友誼賓館;北京市西城区西単北大街109号にある上級のホテル。 註②辟才胡同;西単北大街の西側で、北京電信公司の北側を東西に通る胡同(フートン)
・ 編訳局に着いて、門衛に面接試験に来たと告げると順調に入れた。オーバードクター管理室の事務員の董瑩が、すでに来ていた数十人の面接試験参加者に対して注意事項を話していた。我々は皆、すぐにある会議室で待つことになった。
・ 出願したときはオーバードクターを抜け出ていたので、面接試験の順番は比較的前寄りだった。会議室に入って、面接委員の方々と対面して私は友好的で謙虚だが穏やかな表情でほほえんだ。衣先生の笑顔が見られたのを覚えている。面接試験のポイントとして、私は傲慢でも卑屈でもない態度を貫き、自分のこれまでの研究実績と将来の研究計画を述べた。その中で、持ち出さざるを得ないこととして、私は姜海波(黒竜江大学哲学・公共管理学院副教授で、衣先生の弟子、当時はまだ博士課程を卒業していない)を持ち出して、衣との関係を自分に引き寄せようとした。確かに、交際の無いものが馴れ馴れしく話しかけるきらいがないわけではないが、私が話したことは事実だ。