陣雨ー瀋陽日記

 陣雨(zhenyu);にわか雨、通り雨、晴天の日にひとしきり降っては止み、またひとしきり降る雨。
 辞書にはこのように書いてあった。
 今日は午前中に印刷会社に行って、この1か月ほど掛かりっきりになっていた弁論大会のまとめの冊子の原稿を納入し、編集の打ち合わせをしていた。午前中とはいっても、道に迷って印刷会社についたのは、12時前で11時半からの昼食時間の最中だったから、編集に取りかかったのは1時前だった。
 完璧に編集していたつもりだったが、会社のパソコンに落とすと、送りがずれたりして、思いの外時間がかかった。2時半頃から、外は激しい雨になっていた。心配した日本人スタッフが車の手配をしてくれた。地下鉄の駅まで20分はかかるし、バス停までも徒歩10分は見なければいけない。おまけに当地は、一雨来ると道路は水浸し、沙漠から吹き寄せられた砂塵が泥濘と化すから、傘があっても、かなり難儀することは確実だ。もとより、傘など持っているはずがないからである。というのも、昼までは晴天だったのだ。
 仕事が終わって、送って貰った地下鉄駅ではまだ小振りだったが、どこから現れたのか、傘を売っている夫婦を見て、念のために買ってみた。折りたたみの傘で15元だった。少し高値だが、100円ショップのビニール傘よりは少し上等のものだ。
 最寄りの地下鉄駅について、空を見上げたら、青空に戻っていた。自転車のサドルは濡れていたが、傘は必要なかった。
 宿舎に帰って、掃除のおばさんに言うと、「ヅェンユィ」だという。辞書を調べたら、冒頭の語が出てきた。