歯科ー瀋陽日記

 日本に帰国中の僕のスケジュールには歯科検診が必ず入っている。今年もかかりつけの歯科医で検査して貰ったところ、問題がないと言っていたので安心して瀋陽に来たのだったが、その検査から2週間後に門歯の次の歯が欠けてしまったのだ。それほど歯は難しいと言おうか。それとも、日本の歯科医も余り当てにはならないとでも言おうか。歯磨きは朝夕2回、時々歯間ブラッシも使って磨いてはいるのだが、秘かの進んでいた根本の虫食い(?)は見つけられなかったのだろうか。
 僕の虫歯の歴史は長く(自慢にもならないが)、18才で十二指腸潰瘍の手術で入院した時のケアができていなかったことが始まりなのだが、その後50年近く歯の手入れに莫大な金と時間を使っているようだ。その点、妻は立派なものだ。4本ほどの臼歯に金属(アマルガム)を填め込んでいるだけで、すべて自前の健康な歯だ。なにしろ「親の敵」のように必死になって歯を磨いているのだから、当然かも知れないが、尊敬に値する。
 さて、中国医科大学の口腔外科にはこれまで2回通ったことがある。2回とも中国人日本語教師の付き添いで行った。その教師は最近女児を出産して産休に入っている。しかし、今回は幸いなことに、教え子が付き添ってくれた。病院で出会った生徒の母親はその病院の看護師で40才過ぎの働き盛りで同僚の中でも中核になっているような人に見えた。
 まず診てくれたのが、これまで2回世話になった先生で、彼女は主任の地位にいた。この人は愛媛大学で研修してきた人で日本語に不自由しない。
 治療方針を説明してくれた。まず、欠けた歯の根元を掃除して、次に土台を造り、最後に義歯を入れる手順である。義歯を何にするかは難しいところだ。金属製の義歯だと安いが歯茎に余りいい影響を与えない。セラミックだと高くつくが、見てくれも安全面もいいとのことだった。躊躇なくセラミックにした。値段は処置料込みで3千400元(約54000円)ぐらいとのこと、立ち会った看護師の母親が半額にできるからと言葉を添えてくれたので、即座にそれに決めた。
 治療に向かった先は「貴賓室」と表示があった。手前にソファーがあって、奥に2台の治療用椅子が並んでいた。