草原の草笛ーハイラル紀行

 表題にも「ハイラル」という名を使っているが、今の中国にはハイラル市は存在していない。ホロンバイル(呼倫貝尓)市のハイラル区としてしか残っていない。しかし、街の多くの人々は今でも「ハイラル(海拉尓)」と呼んでいる。ホロンバイルとは本来、満州里の南にあるホロン(呼倫)湖と新巴尓虎左旗の南西にあって、そのほとんどがモンゴル人民共和国に位置しているボイル(貝尓)湖を三角形の底辺の二点にして、頂点に旧ハイラルを置いた、草原地帯一帯を呼んでいた呼称のようである。そのホロンバイル草原の名が中心都市ハイラルに取って代わってホロンバイル(ボイル)となったようだ。
 この辺り一帯は、内モンゴル自治区タツノオトシゴに見立てると、モンゴルに向かって口を突き出している部分に当たる。そして、モンゴルの側から見ると、ノモンハン一帯は中国に向かって尽きだした羊の頭の目に当たる部分のようだ。
 また、「ノモンハン」についてはこれまで何人かの人書いているが、半藤一利しの労作「ノモンハン」を一読していたので、その辺り一帯の風景は余所事には見えなかった。