秋冷ーハイラル紀行

 瀋陽を出たのは夜の7時、ハイラル(海拉尓)に着いたのが10時頃だった。予想はしていたものの、気温は7度ほどで、日本で言えば11月初旬の気温であった。確か、瀋陽の気温は15度ぐらいであったと思うから、気温差は10度近くある。空港にはガイドのハクさんが迎えに来ているはずなのだが、見当たらない。5分ほどすると、携帯の呼び出し音が響いた。すぐ近くにいるという。見わたすと携帯で話している中年の首の詰まった人が見えた。ハクさんであった。
 首が詰まったと表現したが、前の横綱朝青龍を思い出して欲しい。白鳳ではなく朝青龍である。同じモンゴル族ではあるが、朝青龍の首はほとんどない。肩から頭が突き出ている感じである。思わず「猪首」という古い表現を思い出してしまった。モンゴル族の一部にはこういう首の形をしてる人が多いのかも知れない。学校で世話になっているハクさんも全く同じような体形で、同じような首をしている。兄弟ではないかとさえ思った。確かめてみると、そうでは無かったのだが、学校のハクさんを5,6才若くしたら、このハクさんになるのではないかと本気で思ったものだ。
 運転手はコさんという漢族の人だったが、彼らはこれまで何度か一緒に仕事をしたらしく、仲は悪くない。(仲の悪い人をペアでくっつけることはないはずだが)
 聞いていると、ハクさんの口から、何人かの同僚の名前が出てきた。偶然にも、一昨年のツアーのガイドをしたのがこのハクさんだったのだ。(それほど日本語のガイドが少ないとも言えるが)。
 ハイラルの夜景はきれいだった。空気が澄んでいるせいか、はたまた周りにきらびやかな電飾が少ないせいか、ホテルまでの道筋に市内のメインストリートを通ったのだが、日本の地方都市、例えば金沢とか岡山といった街と余り変わらない賑やかさであった。現在の人口が約50万人で数年後には70万人になる予定で、市街地の周りの新興住宅地には高層マンションが建築中であるという。夜なのでその日は見なかったが、後日、確かに建築ラッシュなのを見た。中国のどの地方都市も同じような具合である。
 しかし、ホテルの窓から見る夜景もまたとてもきれいだった。