国境ーハイラル紀行

 国境とは名ばかりで、予想していた有刺鉄線などどこにもない。省道201号から100米ほど離れたところに、50米置きに白い杭が並んでいるだけである。映画『クロスイング』のモンゴルへの越境の場面が頭にこびりついていたので、この風景は意外だった。近くに、人民解放軍の監視塔があるとのことだったが、これだけ近ければ、越境は簡単にできるはずだ。それでも、何の仕掛けも構造物もないところを見ると、ここを超えても、モンゴル側の道路や民家に容易に達することができないからなのかなと想像した。(監視塔と兵士宿舎?)
 ここまで来るのに、大体80km/時走行で約3時間半だった。この辺りへ来るのには、ハイラルから一端、新巴尓虎(シンバアルフ)左旗を目指し、その町並みが見える頃に、左折して、南西方向に向かう。地図で確認すると、一端停車した場所から少し戻ったところ、道路から恐らく10kmほど入ったところにハルハ川が国境を区分して流れている。
 運転手は休憩がてら足を伸ばしている。僕はといえば、国境線に近づく勇気もなく、当たりをうろついて、掲示物らしきものをカメラに納めたが、生憎と望遠レンズを持ってこなかったので、何が書いてあるか読めなかった。(望遠レンズを持参しなかったのは、若い頃に韓国国境付近をカメラを持って歩いていて、不審者とみられて一時拘束された苦い経験があったからだ。)
  今再確認すると、国境線の向こう側は池と湿地帯になっている。これでは越えても行き場所がない。あちこちに点在する池は野鳥の飛来地で有名だとガイドは言う。鳥でもなければ、この草原と湿原を越えていくことは叶わないはずだ。
 この後は、一路、ノモンハン村(諾門汗布日徳)を目指すことになった。