密室ー瀋陽日記

 密室脱出体験ゲームというものを経験した。4室からできている密室にそれぞれ鍵がかかっていて、第4室目には第1室から出る鍵のヒントがあるというのだ。第1の部屋にはヒントになる紙が一枚置いてあるきりである。その部屋に入って、目まいがするようなゼブラ模様の中で、我々4人(僕以外は男子1人、女子2人の学生)は必死にヒントを探した。経営者(?)らしき男性は、この部屋は最も簡単な部屋だとのたもうたが、20分経っても、全くヒントがつかめない。早々と降参して、係の者に助言を求めると、室内に置いてあった紙片の一部分に小さい針の穴がうがってあった。それがヒントだという。明かりに透かしてみると、確かに穴があり、計算してみるとドアに入ったところに、タイルと同調した紙を被せた鍵が見つかった。つまり、二重に盲点を突いたわけである。一つは、誰もが光にかざして見る、濃い茶色の紙の手元の辺りにその穴は空いていた。しかも、よく確かめないと気付かない程度にさりげなく。また、ドアから入ってすぐの所、開いたドアの真下になる辺りに偽装のタイルはあった。これも盲点である。入る前から、きっと盲点を突くだろうと予想はしていたが、その予想を裏切る所こそが盲点であった。 やっと第2室に入ったが、ここでもまた、難渋した。Pのような9のような字とLのような微妙に、80°ほど傾いた「」括弧のような2枚の紙片が先程の紙片と同じ色で置いてあった。それも書棚の各段に。最上段には、いかにも鍵が入っているらしい宝石箱があった。男の学生が、書棚を揺すっていると、不思議と、前に出てきた。書棚の裏が通路になっていた。しかも一際狭い部屋で、そこには何のヒントもない。壁を触ったり、床を触ったり、剥がれかけのプラスチックパネルを触ってみると、そのパネルが取れた。先客の苦闘の後だったらしく、そこには何のヒントもなかった。勿論鍵も。2度目の降参をすると、係員はまず、紙片の謎解きをしてくれた。PULLであった。P+U(第1室目の紙片)+L+Lという種である。それを解読する前に偶然に開けてしまっていた。ところが第3室から4室に入る方法が分からない。係員は「入るときに何をもってきましたか」と一人の女の子に聞いた。彼女が上靴のカバー4人分と一緒に鍵をもっていたのだ。それと気付かずに。つまり、カバーの中に紛れ込ませていたという仕掛けであった。 勇躍第4室を開けた。そこは風船の山だった。(海と言った方が感覚には合うかも)。そこでも難行が待っていた。白板には「不是巧合是错误」(上手く合わなければ間違い)と謎のような言葉が書いてあった。壁は四面とも異なる色で、異なる数字が小さく書いてある。当然のように、誤と同音の「5」を外してダイヤルを回して見たり、巧合と会う数字はないかと考えたりしてみたが、疲れてきた。あげくに、皆でひとしきり風船の海を泳ぎまわっていると女の子が風船に埋まった宝石箱を見つけた。大ぶりの宝石箱を開いてみると、中には番号を書いた風船が7個入っていた。そのうち、2個は同じ番号で色違いであった。
 ここでも、やはり降参してヒントを求めた。間もなく時間切れだったからだ。
 さて、最後のヒントはやはり盲点を突いたものであった。でもこれは伏せておく方がいいだろう。次の入室者のために。
 時間切れ寸前に出た。もともと、ぼくはパズルが好きだ。しかし、家内にはかなわない。彼女は猛烈なスピードで数独を解いていく。今度は家内と一緒に来てみようかなと思った。
 「密室」から抜け出す手がかりを得るために。