お好みー瀋陽日記

 日本料理となると、刺身とか寿司が定番なのだが、僕には寿司を作る技術がない。幸い学生へのアンケートでも、寿司や親子丼よりもお好み焼きが人気があった。
 水曜日の昼の昼寝の時間に文系クラス、木曜日の夕食後と夜の自習時間を使って理系クラスがそれぞれお好み焼きに挑戦した。授業に差し障りが無いように、こういう時間にしたのだが、学生を我々外教の調理室兼食堂に入れて、料理を作らせるのは初めてであった。それぞれ作る量に合わせて、希望者(調理の)を制限した。文系は4人、理系は6人にした。
 先ず材料を並べて、説明した。お好み焼き粉(なければ餃子粉)、キャベツ、ネギ(ネギがだめな子用にほうれん草のお浸し)、卵、天かす(スーパーには天かすが見当たらなかったので、揚げ餅を砕いて代用した)、山芋、水、油、出汁の素、を並べて説明し調理にかかった。ネギを刻むのはどのクラスにも上手な子がいて、細かく切っている。キャベツはいつもの自分用と違って、8分の1のものの芯を取って、5ミリ幅ぐらいに刻んだ。少し手抜きでやったが、案外、味は変わらなかった。山芋だけは僕が皮をむいておろした。大抵の生徒は触ったこともないし、手が荒れたり、かぶれたり(うちの妻はこのパターン)するといけないので、そうしたのだが、日本から持ってきた「おろし金」を見て、不思議そうにしている。それは中国のものですかと聞くので、いや日本から持ってきたというと納得顔、中国のものは目が荒いんだそうだ。
 ボールにキャベツや他の野菜と卵、天かす、山芋、お好み焼き粉、その半分の量の餃子粉、水を適当に入れて混ぜさせる。後で気付いたのだが、文系クラスでは天かすを、理系クラスでは出汁の素を入れるのを忘れた。(まあ、いいか!)
 練り方にも個性があって、徹底的に捏ねている子もいたが、だめとは言わなかった。
 さて、フライパン2つで焼き始めたが、火の強さはどれ位ですかと聞いてきた。始めだけ強火して、途中は中火でじっくり焼くことといったが、それで良かったのか。片面を焼きながら、豚肉を表面に敷き並べていく。豚肉は三枚肉だが、中国ではスライスしたときに丸く円筒型になったまま冷凍して売っている。それをほぐしながら並べていくのだが、やはりここでも個性が出る。重なっても適当にする(僕のような)子もいれば、一枚一枚開いて、丁寧に並べていく子もいる。 フライ返しはあるのだが、裏返すのに皆苦闘している。記録係をしていた女の子が「わたし得意!」と挑戦したが、4分の1ほどがパンからはみ出してしまった。「ごめん、はみ出したのは私が食べる。」と言っていたが、気にしない気にしない。僕が見本をやってみて、1回目は成功したが、2回目は、途中で6分の1ほどが中折れになってしまった。女の子が箸で丁寧に広げてくれた。七枚ほど焼いて、トッピングにかかった。鰹節、紅ショウガ、青のり、お好み焼きソース(とんかつソースでも)、マヨネーズを用意した。記録していた子が聞いてきた。中国で手に入りますか。残念ながら、マヨネーズ以外はなかなか手に入らない。お好み焼きソースはとんかつソースやたこやきソースで代用できるが、ウスターソースにケチャップなどを混ぜてもそれらしい味になるといったが、正しかったか?
 それぞれがトッピングにかかっている。教えられたとおりにしている子がいるかと思うと、マヨネーズでハートマークを書いて中にLAVEと書いて遊んでいる女の子もいる。

 一枚を八等分した欠片が1人分の予定だったが、文系クラスでは8×4=32人分、理系クラスでは7×8=56人分できあがった。両方とも記念写真を撮ったのだが、文系の時は僕のカメラがなかった。理系の写真だけを紹介する。
 感想は、美味しかった。楽しかった、日本に行ったら必ず作ってみる、今週末家で作ってみる、とみんな意欲的だった。日頃の授業よりも充実していたようだ。ちなみに、中国の中学高校には日本のような「家庭科、調理実習」なんてものは無い。だから余計に楽しかったのかも知れない。