肖豊3ー瀋陽日記

 「つまり、パパは自分が大学に行くのを諦めたと言うことだよね。後悔したことはなかったの?」
 「ちょっと残念に思ったこともあったんだけど、後悔なんて一度もなかった。後悔はどんな誤りよりももっと大きな誤りだ。後悔してもなにも変わらない。だから、将来何にぶつかっても、どんな結果になっても、後悔は無駄だということを覚えておいて欲しい」
 「ええ、後悔しないということですね」
 「うん、だがそれは事前にちゃんと考えた上で成り立つものなんだ」
 「でも、私が不意に決めたり、衝動的に決めたらどうするの」
 「衝動というのは、危険を予知しながら、何も考えずに海に飛び込むことではなく、むしろ、飛び込んだときにライフジャケットを着なかったということだ。同様に、理性というのは、冒険を徹底的に嫌うことではない。バンジージャンプの前に、自分を結んでいる縄をちゃんとチェックするということだよ」
 「よくわからないけど、ちょっと説明してくれる」
 「具体的に言えば、人生の選択肢自体には正解はないんだ。何を選ぶかは人それぞれの自由だ。例えばね、今この山の上から見た景色はふつう都市で見るものとは全然違うだろう。平和な生活の方がいいか、便利だが高度な競争社会の生活の方がいいかは誰にも言えない。自分にぴったり合うものが完璧だ」
 「で、それがパパが自分でどこに行くかを決めた理由だよね」
 「そのとおりだ。自分の人生は自分で決める。自分の手にペンを持って美しい人生を書く。それが俺と母さんが君に願っていることだよ。中学3年から今まで、考える時間はたっぷりあっただろう。今ここで決めよう。それが今日君をここに連れてきた目的の一つだよ」
 少しの沈黙の後で、私は父にこういった。「パパ、私、決めた。日本に行きたい。もっと先進的なものを学びたい」