瀋陽日記ー長白山3

 翌朝、6時過ぎに目を覚ました僕はこの民宿を後にした。駅前のぬかるんだ広場には10数台のマイクロバスやバスが停車していて客引きに忙しい。長白山へというとマイクロバスに乗せてくれた。客がほぼ満員になるのを待ってバスはすぐ出発したのだが、すぐに停車した。朝食を摂るための停車だった。乗客が全員降りて店の中に入った。中には先客が満員で席がない。立ったままの人も多い。暫く見ていると皆が店の奥まで入って、てんでに食器を抱えて出てくる。僕も慌てて列に加わった。朝食は外食の定番になっている、包子(肉まん)と豆腐脳(卵豆腐がスープの中に浮かんでいて、ニンニクや香祭を好みに応じて混ぜて食べる)を注文してテーブルの一角で食べた。食べ終わった人からバスに乗車していくのだが、まだ待っている人もいるのでゆっくり食べた。
 食べ終わってマイクロバスに乗ろうとすると、このバスはホテルに行くのだという。何時そんなアナウンスがあったかも気付かなかったのだが、慌てて、前の大型バスに乗り換えた。僕が最後から3人目であった。
 バスの中は満員、ほとんどが若者で、僕のような老人は見当たらない。おまけに、心得た人が多く、冬用のダンジャケットを着込んだ若者もいる。前の席の親子らしい中年の女性と若い女性の二人連れは僕と同じ平服のままだった。用意した防水ジャンパーを着ていてもまだ肌寒い。心配していたがなるようになるだろうと考えているうちに、バスは山間に入っていった。道端には白樺の林が目に着くようになった。路面には雪はないが林の中は一面真っ白である。時々、ダケカンバやトウヒなどの針葉樹が混じってきている。

駅から長白山山門(北坡)まで約46キロ、1時間ほどだというので、暫くまどろんでいたのだが、外の景色の変化に気付いて、やおら愛用のカメラをリュウクから取り出した。バスの窓越しに撮る写真は余り鮮明ではない。
 やっと山門にたどり着いたと思ったら、バスはそのまま通りすぎて、小さな店の前に停車した。そこは、冬用のブーツやウエアーを貸し出している店だった。ブーツが50元、ウエアーが50元で貸し出している。山頂にまで行くのなら、今の服装はまだ心許ないので、一揃え借りることにした。代金100元+預託金(デポジット)200元、計300元を払わされた。領収書を大事に持っていないと、200元が返ってこない。





 バスに乗り込んだのが一番最後になった。前にいた席には若者が座っていたが、僕の顔(年齢?)を見て席を譲ってくれた。大学の同級生らしい男女6人連れだった。このバスに乗ったときバスの料金は片道20元、往復40元と言われ、ガイド兼車掌の携帯番号を教えられた。名前を聞き漏らしたのでけいたいには「バスガイド」と中国語で打ち込んで控えておいた。これは、下山したときに、ガイドに連絡して乗ってきたバスを探すのに必要だからだ。間もなく到着と言うときに、ガイドはバスは午後2時頃に出発すると告げていた。