瀋陽日記ー剣道2

 瀋陽剣道友会の人びとはとても爽やかな人たちであった。約2時間半の練習を見ながら、僕は時間をあまり長く感じなかった。道着に胴と垂れをつけて準備運動。素振り50回、対面素振り20回。技術指導:①面⇒払い胴、面打ち⇒払い面、②突き⇒払い胴、③面打ち⇒竹刀で受け、受けて胴、受けて小手。④面⇒受けて胴、小手の連続練習。⑤面打ちの躱し:間合いの取り方1後退、2右躱し、3左躱し。1時間経過したので、5分休憩、水分補給、小手を着けて再開。技術指導⑥小手⇒小手(「小手返しの小手」と呼ぶのか、「後の先」の小手)、相手を替えて約15分。黙想、互礼、面着け。相手を替えて掛かり稽古。師範を含め9人が一巡するまで30分。
 4時から師範が一人一人に稽古をつける。弟子に打ち込ませ、何度か払ったりしながら、最後は面や胴などで決めていく。師範の熱気と格の違いが如実に出てくる。更に、師範の弟子に対する厳しい愛情が全身に表現される。
初段の高弟・張さんとの稽古は試合に近いスピード感と体技、体術を尽くしたつばぜり合いの後、面打ちへの返し面で見事に決まった。頭上に打ち下ろされた竹刀の鋭い音が「面」と発する声とともに技の決まりを教えてくれた。張師範は現在、剣道連盟の三段だが、今年十月の商談試験で四段取得が確実視されている。
 二人目の傅さんは、長身、長髪の美丈夫である。坂本竜馬にどこか似ている。切れ長の目なのか長髪なのか。柔和に見えて芯には強靭なものを感じさせる。この人の立ち姿は静かだが凛として動じない物がある。「ああ、この人は伸びるだろうな」と僕に感じさせるものがある。張師範と数合、竹刀を打ちあった後、面打ちに踏み込んだところを躱され、胴を打ち返された。ほんの一閃というに相応しい早業であった。今日の案内人であるジョ君は体力に劣り、鍔競り合いから、跳ね飛ばされて道場の柱に背中を打ち付けそうになり、思い切って胴打ちに踏み込んだところをビシッと面が決まった。
 師範の立ち居振る舞いには、「動中静あり、静中動あり」だ体現されているように見え、その雰囲気は稽古全体にも表れているようだった。(続く)